遺留分侵害額請求の手続き方法や時効について解説
被相続人の遺言書の内容や生前贈与によって、特定の相続人の取り分が極端に少なくなる場合があります。
このような場合には、遺留分(相続人に認められている最低限の遺産の取り分を確保するための権利)が侵害されたとして、侵害した相手に対して金銭の支払いを求めることが考えられます。
この記事では、遺留分侵害額請求の概要、手続き方法、時効について解説します。
遺留分侵害額請求とは?対象となるケースを解説
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、遺留分を侵害している相手(遺贈を受けたひとや、多額の生前贈与を受けた相続人など)に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求する権利です。
遺留分侵害額請求が認められるケースとしては、以下のケースがあります。
■遺言書によって、特定の相続人に多くの財産を相続したり、第三者に相続財産のほとんどが遺贈された結果、他の相続人の取り分が遺留分を下回ったケース
■被相続人が亡くなる前の一定期間(原則として相続開始前10年間)に行われた贈与や、遺留分を侵害することを知って行われた贈与などによって、相続開始時の財産が少なくなり、結果として相続人の遺留分が侵害されたケース
遺留分侵害額請求の具体的な手続きの流れ
遺留分侵害額請求は、以下の流れで進めるのが一般的です。
- 相続財産と贈与分を調査し、遺留分はいくらかを把握する(不動産の登記簿謄本や預金通帳の履歴などを確認することが多い)
- 遺留分侵害額請求権を行使する意思表示を内容証明郵便で行う
- (話し合いで解決できない場合)調停・訴訟の手続きで権利主張を行う
遺留分侵害額請求の時効
遺留分侵害額請求権には、以下の2種類の期間制限が設けられています。
消滅時効
「相続が開始されたこと」と「遺留分が侵害されていること」の双方を知った日から1年以内に請求を行わないと、遺留分侵害額請求権は消滅します。
また遺留分侵害額請求を行ったとしても、その後具体的な金銭の支払いを求めずにいると、金銭債権の5年間の時効により、権利が消滅する可能性があります。
そのため、遺留分侵害額請求を行った後も適切な手続きを進めることが重要です。
除斥期間
被相続人の死亡日(相続開始)から10年が経過すると、遺留分侵害額請求権は完全に消滅します。
この10年という期間は除斥期間と呼ばれ、特定の権利について、一定の期限を過ぎると行使できなくなる期間です。
除斥期間は時効とは異なり、請求や交渉を行ったとしてもその進行を止めることはできません。
まとめ
遺留分侵害額請求は、相続人に保障された最低限の権利を実現するための重要な手続きですが期間制限があるため、早めに手続きを開始することが肝要です。
遺留分侵害の可能性があると感じたら、まずは相続問題や遺留分に詳しい弁護士に相談し、専門的なサポートを受けることをおすすめします。