休業損害とは
■休業損害の意義
交通事故により負傷すると、治療等のためにしばらく働くことができず、本来得られたはずの収入が得られなくなる場合があります。このような損害のことを、休業損害といいます。
休業損害の金額は、日額基礎収入(1日当たりの損害額)と休業日数の積によって計算します。なお、休業日数とは業務内容や傷害の内容・程度等に応じて相当な日数のことをいい、実際に仕事を休んだ日数と休業日数が一致するとは限りません。
休業損害=日額基礎収入×休業日数
■休業損害の具体的な計算方法
日額基礎収入の計算方法は、被害者の属性によって変わってきます。
〇給与所得者の場合
給与所得者の日額基礎収入は、事故直前3カ月間または1年間の給与合計額を、それぞれ実働日数で割ることによって計算します。これをもとに、先ほどの方法で休業損害を計算すると、以下のような計算式が成り立ちます。
休業損害=(直前3カ月間の給与合計額/直前3カ月間の実働日数)×休業日数
休業損害=(直前1年間の給与合計額/直前1年間の実働日数)×休業日数
日額基礎収入については、事故直前3カ月間の給与合計額を【90日】で割るとか、事故直前1年間の給与合計額を【365日】で割るといった説明がなされる場合もあります。しかし、日額基礎収入は1日働いた場合に得られる平均的な対価ですから、これを計算するにあたっては、3カ月間または1年間に発生した給与合計額を【その期間内の実働日数】で割るのが適切です。90日や365日で割る計算だと、平日・休日をすべて含めて1日当たりの給与を計算することになって、日額基礎収入が実際より安くなってしまいます。
〇事業所得者の場合
被害者が自営業者等の事業所得者にあたる場合には、事故直前の1年間に発生した所得を365日で割って計算します。1年間の所得は、課税証明書や所属税申告書の控えによって証明します。
確定申告をしていない場合には、帳簿等の資料を使うこともあります。
■有給休暇を利用した場合の計算方法
交通事故によって負傷し、その治療をする目的で有給休暇を利用した場合、会社からは当然賃金が支払われます。したがって、一見すると損害は発生していないようにも思われます。
しかし、有給休暇を利用して治療を行ったということは、有給休暇の日数を削って、本来自由に使えたはずの時間を治療に使ったということです。そのため、有給休暇を利用して治療した場合であっても、休業日数に応じた休業損害が認められます。裁判例にも、同様の事案で休業損害を認定したものがあります。